離婚入門(年金分割)

1.概要

年金分割とは、離婚をするにあたって、婚姻期間中に夫または妻が納付した年金保険料について、夫または妻の納付額に差がある場合に、婚姻期間中の厚生年金記録を分割することです。
この手続きを行うことにより、通常であれば婚姻期間中の厚生年金保険料(平成27年9月以前の旧共済年金保険料も含みます。以下同じ)の納付額が相手方より少なかった夫または妻は、将来の年金受給額を増やすことができます。

2.年金分割の対象

年金には、国民年金、厚生年金、確定拠出年金等、いくつかの種類がありますが、そのうち年金分割の対象となるものは厚生年金(平成27年9月以前の旧共済年金も含みます。以下同じ)のみであり、確定拠出年金等については別途、財産分与の対象となり得ますが年金分割の対象ではありません。

3.年金分割の種類

年金分割の種類には、2つの種類があります。1つは合意分割という分割手続きであり、もう1つは3号分割という分割手続きです。
この2つの年金分割手続きの違いは、3号分割で行える年金分割であれば、相手方の同意を取り付けることなく年金分割の手続きが進められる一方で、合意分割で行うべきとされている年金分割の場合には、相手方当事者の同意の取得または裁判所に年金分割審判の申立をしたうえで、年金分割の審判の取得が必要となる点です。
年金分割のうち、3号分割で行える対象は、平成20年4月1日以降において、夫または妻のどちらかが加入していた厚生年金において、3号被保険者(※)となっていた期間の厚生年金保険です。
従って、平成20年3月31日以前における厚生年金記録に関して分割の対象とする場合や、平成20年4月1日以降であっても、夫または妻のどちらも相手方の3号被保険者となっていない期間についての厚生年金記録に関して分割の対象とする場合には、合意分割を行う必要があります。

3号被保険者とは、厚生年金保険に加入している夫または妻に、扶養されている配偶者であり、自身で国民年金を支払わなくても国民年金に加入していることとなる配偶者のことです。

4.算定額の目安

年金分割の制度の概要は上述の通りですが、一番肝心な点は年金分割を行うことによって具体的にどの程度、将来受給できる年金額が増加(請求を受ける側においては減少)するかという点かと思います。
この点については、現時点において、50歳以上の方で老齢基礎年金の受給資格を満たしている方であれば、日本年金機構または最寄りの年金事務所に、年金分割の情報通知書を申請する際に、年金分割を行うことで、分割後の厚生年金の受給額の見込み額を教えてもらうことができます。
上記の要件を満たさない方の場合には、おおよその見込み額を試算することにより目安を把握することとなります。

5.年金分割の請求期限について

年金分割の請求は、離婚日の翌日から数えて2年間が経過するまでに請求をしないと請求ができなくなります。また、離婚後2年間の経過前であっても、相手方が死亡してしまった場合には、死亡日から起算して1か月を経過すると請求ができなくなります。
そのため、年金分割の請求は特別な事情がなければ、離婚の申立てと同時に行うことが望ましいと思います。

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