離婚入門(社会保険)
1.夫または妻の医療保険について
医療保険とは、病院などの医療機関で医療費を支払うときに、その一部または全部を負担してもらう保険の総称のことを指します。
健康保険とは健康保険の適用事業所で働くサラリーマンなどの民間会社の勤労者が加入している医療保険のことであり、国民健康保険は上記の健康保険に加入している勤労者以外(正確には共済組合、船員保険に加入している人以外)の一般住民が加入する医療保険のことです。
婚姻期間中、夫または妻の扶養家族として健康保険に加入していた配偶者は、離婚をする場合には、被扶養者としての資格を失うため、次のいずれかの方法により、自分自身で国民健康保険または健康保険に加入する必要が生じます。
すなわち、離婚後、それまで相手方の被扶養者として健康保険に加入していた配偶者は、無職であるかパートタイマーであって、健康保険の加入資格がない場合には、国民健康保険に加入することとなります。
この場合、国民健康保険に加入するには、健康保険の被扶養者ではなくなったことを証する資格喪失証明書が必要となるため、当該健康保険に関する事業所に勤務する配偶者を通じて、その事業所から資格喪失証明書を取り寄せてもらう必要があります。
また、もともと民間企業に勤務していたものの相手方配偶者の非扶養者となっていた場合で、当該勤務先の健康保険の加入資格を満たしている場合には、当該勤務先に被扶養者でなくなったと申告をすればその勤務先の健康保険に加入することができます。
なお、婚姻期間中、夫または妻を世帯主として、国民健康保険に加入していた配偶者で世帯主でない人が離婚する場合にも、一定の手続きを踏んで、自身で国民健康保険か、健康保険に加入することとなります。
2.子の医療保険
子は、父母が離婚したとしても、必ずしも子の親権者または監護者となる側の親の医療保険に加入することになるものではありません。
子に関しては、離婚後の扶養の実態によって、父母のどちらの医療保険に加入するかが変わってきます。
例えば、離婚をして親権は母が持つこととなったとして、健康保険の被保険者が父であり、子がその被扶養者として当該健康保険に加入していた場合には、離婚後も父が子を扶養していると評価できる場合には、子が父の被扶養者としての要件を満たすこととなり、その後も従前通り、父の被扶養者として健康保険を利用し続けられます。その理由は、健康保険の場合には、扶養の実態により被扶養者であるか否かが判断されるところ、同居していることは被扶養者の要件とはされていないためです。
他方で、父が国民健康保険に筆頭者として加入していた場合に、離婚後、親権を母が持つこととなった場合には、子は父を被保険者とする国民健康保険からは脱退せざるを得なくなります。
これは、国民健康保険の場合には、住民票記載の世帯を基準として、加入資格の有無を判断しているため、父と同居していない子には加入資格はないとされているためです。
この場合には、母が加入する健康保険における被扶養者とするか、母が国民健康保険に加入し、世帯員として同居の子を国民健康保険に加入させるかのいずれかの方法を取る必要が生じます。